島らしい家族や地域のあり方と、季節を感じながら生きられる穏やかな暮らし

2023.11.10

島民インタビュー

島らしい家族や地域のあり方と、季節を感じながら生きられる穏やかな暮らし

今回の移住者は、11年前に東京から甑島へと単身で移住し、島内で結婚、子育てを経験されている小川真希さん。島らしい家族と地域のあり方、自然とともにある暮らしについて伺いました。

「通っていた美術の大学の同窓生に甑島出身の友人がいて、その友人に誘われて遊びに来たのが最初です。丁度お盆の時期で夏祭りを楽しんだり、釣りたてのイカを食べさせてもらったり・・楽しかった思い出もありながら、2度目の来島ではその友人が主催するアートのプロジェクトに参加するということで1か月間滞在しました。その時の、自転車で島を走るだけで幸せみたいな印象が強く残っていて。東京で働いていていた会社を辞めてこれからどうしようかと考えていた時に、友人から、甑島で働かない?と連絡が来てすぐ移住を決めました。知り合いもいて、仕事もあるというのは移住の背中をかなり押してくれていたと思います。

幼少期にインドネシアに住んでいたことがあって、休みのときにはよく離島に遊びに行きました。子ども心に、島っていいところだなっていう風に思っていて、今振り返ればそういう原体験が今に繋がっているのかなとも思います。」

島の家族のあり方を見て「結婚したい」と思えた。

「島に来て5年後に結婚したんですけど、その間島の家族を見ていてその在り方が良いなと思っていました。都会と違って通勤時間がほぼなくて、労働時間も平均的に短いから、家族で過ごせる時間がその分多いんですよね。だからか、家族仲がいいなと外から見て思える家族が多い印象で。だいたいの人が夕方に仕事が終わって帰るから、夜ごはんも揃って食べられたりとか、ライフスタイルが都会とは違うと思います。東京にいた時は30代くらいで独身でも一緒に遊べる友達も多くて、それまではあまり結婚のことを考えずにいたけど、島の家族を見ていて自然と、結婚したいと思えたところがあります。」

その後、島で出会った方と結婚。実家のある横浜での里帰り出産を経て、島での子育てがスタートします。

地域社会に見守られる安心感の中で子育てができている

「私の場合は島に義理の両親がいるから子育ての面ではすごくサポートしてもらっています。島はお互い見知った人が多く、地域社会の中で見守られる中で安心して子育てができています。」

家の中という閉鎖的な空間だけではなく、外にも子育ての環境があることは、救いになっていると言います。

「都会で、親も近くに居なくて、近所の人とも挨拶するだけで会話しないくらいの距離感で赤ちゃんを抱えているのは大変だろうなと思います。保育園とかに行きだせば社会との接点も復活してくるけど、育児休暇中の間でも、一歩外に出れば地域の人が温かく声をかけてくれる環境があるということは育てる人の心の安定につながると思います。

「島での生活は時間に余裕を持ちやすいということも言ったんですけど、子育てと仕事の両立で一番難しい時間の確保が自然とできるライフスタイルには、子育てのしやすさを感じます。」

家だけでなく地域で子どもを育てられる安心感、時間にゆとりのあるライフスタイルによって、子育てのしやすい環境を生んでいます。

©️コセリエ

医療面や選択肢の少なさには不安も

その一方、島ならではの難しさも。

「小児科をはじめとする専門医が島にはいないというところは、子育てでも不安な面です。総合医の先生はいるんですけど、船に乗って一日かけて病院に行くということもよくあるので、その面ではやはり不便ですかね。例えば、今の技術を生かしたオンライン診断とか、ICTの発展で変わっていってほしいところです。病児保育がなかったり、仕事以外で預けたいときに子どもを預けられない大変さもあります。あとは、学校や習い事の選択肢は都会と比べるとどうしても少ないです。だからその分、中学卒業して高校で島を出るタイミングでは、本人の気持ち次第ですけど、鹿児島県内とか近いところに絞らなくても広い選択肢の中から選んでくれたらなと思っていたりします。」

甑島は人が人らしくあれる場所

最後に、移住を検討されている方にメッセージをいただきました。

「甑島は人が人らしくあれる場所です。もちろん島も都会も良しあしではあると思うんだけど、都会にいるときは、自分たちを中心にもの・ひと・かねを集めて、食べ物でもなんでも由来のわからないものに囲まれて生きることに疑問を感じていて。」

「都会で暮らしていると全能感が生まれるけど、ここに暮らしているといい意味で世界の一部というか、人は自然の一部ということが暮らしの中で実感できるんです。月が満ち欠けしているさまとかも昔はそこまで興味がなかったし、そもそも空が狭いから見られなくて。自然のいろんな移り変わりも、秋はただ寂しく寒くなっていくだけだと思っていたけど、島にいると本当に秋が実る季節なんだと感じられます。都会に溢れているような広告もなく、自然物に囲まれて、おすそ分けでいただく野菜やお魚に季節を感じながら生きられる穏やかさがあります。人間らしく生きたいなと感じる方におすすめです。」

季節の移ろいを感じる島には、人の暮らしの豊かさがありました。